今回は、グラスウール断熱と埋め込み型ダウンライトの相性についてレポートします。
この記事を読む前に、断熱施工のチェックポイントの記事からご一読いただけると、スムーズに読める内容だと思います。



グラスウール×ダウンライトの相性

電気屋さんがコンセントをはじめスイッチ、ダウンライトの配線工事をされたので、チェックしました。
ダウンライト配線の施工をみて思ったのは、ダウンライトとグラスウールの相性の悪さです。
一連の施工の手順としては、以下になります。
- グラスウールを袋入りで並べ
- 防湿フィルムを貼り
- 石こうボードを貼り
- 石こうボードに穴をあけグラスウールを押しのけ配線を取り出す
- この時に防湿フィルムも破る

この工法は、せっかくスキマなく敷きつめたグラウウールを押しのけるので、かなりの断熱欠損になります。
防湿フィルムも大きく損傷させます。
さて、一番大事なことを書きますが、施工ミスではなくグラスウール断熱の限界です。
グラスウールを選んだ以上、技術的に致し方がないことなのです。
基本的に対策としては、ダウンライト本体の施工時に、電気屋さんにできるだけグラスウールの復元をお願いするしかありません。
それでも元通り、とまではいきません。
一方で、シーリングライトはボードを貼る時点で、大工さんが配線を通してくれます。

ダウンライトの配線も天井に出すか、せめてグラスウールの下に施工しておいてほしいと思いますが、ハウスメーカーの施工手順に基づいた作業なので致し方ありません。
ただ、わが家はシーリングライト多めなので、ここは助かりました。

さて、ダウンライトの配線を確保すると、写真のように大きくグラスウールがずれ込みます。
手を入れてみると、冷たい外の空気を感じました。
つまり、屋根裏の空気が流れ込んで手に当たっています。
朝6時のチェックなので、外気温は17度。
肌寒い風を、手にしっかりと感じました。

遠い場所に配線があったのか、グイっと開けた穴まで引き寄せて配線を確保しています。
断熱の欠損は、屋根裏の冬の寒さと夏の熱がダイレクトに室内に伝わり、室温との差で結露をおこすので、良いことはひとつもありません。
それでは、もう少しわかりやすく、図で解説してみましょう。
とよクマ
わかりやすく図解説明

通常、天井のグラスウールはスキマなく並べられています。
(吊り木は省略しています。)
グラスウール同士のスキマがないことで、外の温かいor冷たい空気を遮断します。

ダウンライトの配線を後から確保しようとすると、グラスウールを押しのけ、天井から配線を探さなければなりません。

さらに、グラスウールの真ん中にダウンライトが来てしまうと、グラスウールは大きく真っ二つになってしまいます。

グラスウールの真下にライトがくれば、上手く被せられますが、どう頑張っても空気層ができてしまいます。
この空気層が結露の原因となります。
ダウンライトは天井下とほぼ平行になっていますので、その分天井裏に機器が出っぱります。

実際には、ダウンライトだけではなく電気の配線があるので、グラスウールはかなり押しのけられてしまいます。
押しのけられた部分は、場所によっては大きな断熱欠損となる可能性があります。
理想としては、断熱に切れ込みを入れて、配線を包み込んで……と思いますが、ダウンライトの小さな穴では、そこまでの施工はできないでしょう。
グラスウールと配線を自前で訂正してみた

一応ですが、自分で少し補修しました。
手に冷たい風を感じない程度まで、調整しました。
電気屋さんがダウンライト施工時に調整してくれることを期待したいところではあります。
……が、人に期待をするのは自分のエゴなので、基本的には期待しなくても結果が出るようにするのが、ぼくの考え方です。
余談ですが、「勝手に人に何かを期待して、その期待に答えてもらえないと怒る。」は、避けたいマインドです。
ぼくが短気を解消するために、日々気を付けていることです。
人に期待をしないだけで、だいぶ生き方はラクになりますね。

それぞれ、すべてのダウンライトをチェック&補修しました。

一応ですが、現場監督にも、
「ダウンライトの配線を確保する際にずらしたグラスウールを丁寧に復元するように、電気屋さんにお伝えください。」
と依頼しておきました。
言わないよりは、言っておく方が良いでしょう。
グラスウールとダウンライトの相性まとめ
今回のダウンライトの配線確保による天井断熱のズレは、施工上致し方の無いことです。
ただ残念なのが、シーリング配線の施工のように、あらかじめ配線を取り出しておけば、まだ状況は違ったと思います。
わが家は平屋なので、基本的には部屋の天井すべてにグラスウールが施工されています。
これが2階建てであれば、状況は違います。
1階のリビングでダウンライトを使い、2階の寝室ではシーリングライトを使うのが一般的です。
1階の天井には、基本的にグラスウールは施工しません。
つまり、天井にグラスウール断熱材がある場所で、ダウンライトの使用は避けるのが良いでしょう。
ハウスメーカーによっては、
- セルローズファイバーなどの天井現場吹き込み
- LEDダウンライト用気密断熱ボックスを設置する
- ↑のようなボックスを木で作成
などの対策があります。
いずれにせよ、天井に敷きつめるだけのグラスウールは、正しく施工をしたとしても、電気の線やダクトで、どんどんズレていきます。
しかし、デメリットばかりでなく施工も手軽で早いので、コストが安い大きなメリットもあります。
いつの時代もどんな業界も、材料費より人件費なのです。
ただ、断熱等級4ではあるものの、実際の気密数値(Q値やC値)は、果たしてどうなのだろうと疑問です。
高性能グラスウールというハイスペックな素材を使いつつも、断熱欠損が多ければ期待した性能や数値は期待できません。
以上のことから、平屋であれば吹き付け断熱を選ぶとストレスフリーですし、2階建てであれば2階にダウンライトを使用しなければグラスウールで十分だと思います。
とよクマ
吹き付け断熱は、詳細は割愛しますが、メリットは大きいもののコストも含め色々な部分を勉強し納得してから、導入すると良いでしょう。
ネット上の情報では良い話が多いですが、デメリットも見極めましょう。
ただ、施工時のチェックが必要ないなどのストレスフリーであることは確かです。
今回の相性の悪さは、実際に家を建てるまで、施工されるまで、わからなかったデメリットです。
家は見た目よりも中身が大事です。
今回の記事が、読者の皆様が納得できる家づくりの助力になれば、これほど嬉しいことはありません。